確かにパワーがあってダウンフォースの少ないマシンは扱い難いです。
ドライバーの実力がよりハッキリ現れるでしょう。
しかしこの取組・・・近年のダウンフォース削減の方向性と矛盾していると思います。
物理の法則を持ち出すまでも無く車速が上がれば何かあった場合のダメージも大きくなります。
安全性を優先する為、近年はダウンフォースの削減に力を入れていたと理解しています。
正直パワーを上げる事には矛盾を感じます。
安定しないマシンは危険なマシン
2014年シーズン。
修理が完全では無かった小林可夢偉のマシンがレースを途中で棄権すると言う出来事がありました。
雨の中マシンコントロールを失ったジュール・ビアンキのマシンが大破し本人が生命の危険を伴う重症を負いました。
F1マシンの安全性はまだ十分ではありません。
安全性が十分に確保されて初めて、ギリギリのオーバーテイク等、手に汗握る展開が起きると考えます。
確かにF1マシンの持つ速さと安全性は相反する要素です。
でも・・・だからこそ・・・高い次元で両立させる努力を第一としなければならないと思うのです。
1000馬力にして乗りにくくするなんてホント意味が分かんないですよね!。乗りにくいマシンに乗って戦うドライバーが可哀想です。
SFをテストしたコバヤシ君がマシンの印象を「乗りやすい車なので楽しかった」と語っていましたが、ケータハムみたいにクセがありすぎてだましだましドライブするマシンより、しっかり走るマシンで戦った方が楽しいに決まってます。
中嶋一貴は「今のF1乗る位ならSFの方がイイ」みたいな話をしていましたけど、これは単なる強がりだけではないでしょう。
このままだとF1はファンからもドライバーからも見放されてしまいそうです。
ですよね。
手足のように操れるマシンがあって初めてテールトゥノーズ・サイドバイサイドのバトルが拝めると思っています。
何処にすっ飛んで行くかわからないマシンでホイールトゥホイールのバトルは無理です。
ドライバーは人間。
命は大切です。
今のタイヤですら「危険だから我々には(倫理的に)作れない。」と言ってブリヂストンは撤退した訳で。
ジュール・ビアンキの事故を見れば明らかな様に今のF1マシンは危険です。
もちろん余りにマシンが完成され過ぎていると、今のスーパーフォーミュラみたいに1秒以内に15〜16台並び、少しの違いで勝敗が決するマニアックなレースになってしまいます。
でもだからと言って「ブースト上げてピーキーなエンジン特性にすれば面白いじゃん。」ってのは安直過ぎると思います。
「乗り難いマシン=面白い」だったらパワーを上げた所でシャモニーの氷上レースよりツマラナイでしょう。
「F1とはどうあるべきか?」もっと真剣に考えて欲しいです。
ニコニコの『F1マシンは運転が簡単だというあなたへ』という沢山再生されてる動画では、「こんなにF1マシンは難しい!」と言うコメントばかりでした。それなのにこの手の議論になると「F1マシンは簡単だ!」という話になっちゃうんですよね。
電子制御が発達したとはいえ、今も昔も生身の人間が操っているという事実は変わらないのに……
ポルシェカレラカップやスーパー耐久など一般的な自動車レースでは絶対ありえない発想ですよね。ブーンとクルマが走っている、クルマでブーンと走ることの楽しさがモータースポーツの原点なのに……
危険なのはあくまでそれに付帯するものであって瑣末なものです。それを求めて大きなレギュレーション改定を行うのは角を矯めて牛を殺す愚行だと思います。
ホント愚行ですよね。
昔のF1マシンと比べても今のF1マシンの方が操縦は難しいと思います。
・ダウンフォースが昔より多い為、ダウンフォースが出ている時(主に高速コーナー)と出ていない時(主に低速コーナー)でマシンの挙動が違う。また縁石に乗り上げる等で急にダウンフォースを失いマシンが不安定になる事がある。
・DRSの操作、ブレーキ・バイ・ワイヤのセッティング変更、燃費を計算してのエンジンマップの変更等、今のF1マシンは色々な操作をしなければならない。(全開で走りながら)
・モーターを併用して加速する為コーナー脱出時のトルクが大きくリアが暴れやすい。
・わざとグリップダウンするように作られたタイヤで走る事を強いられている。またそのグリップダウンは「クリフ(崖)」と呼ばれる程突然やって来る。
ここに更にパワーを上乗せするなんて狂気の沙汰です。
自動車メーカがF1を離れてWECに行ってしまったのは経済的な理由が一番ですが・・・F1の間違った方向性も一因と思います。
ある程度の安全性が確保されて初めてホイールトゥホイールのバトルができる。(=見応えがある)
危険なスポーツであるからこそ安全性は常に頭に入れていて欲しいです。